Marketing Blog マーケティングブログ
その「シニア向け」、誰に向けていますか? 60代の9割が「気持ちは若い」時代のWebマーケティング

「60代以上のお客様を増やしたいので、シニア向けのページを作りたいんです」
「年配の方向けなので、文字を大きく、落ち着いた色でお願いします」
ホームページや広告のご相談で、こうしたご要望をいただくことがあります。
そのとき、私たちアライブは一つだけ質問をさせていただきます。
「そのページを見る方は、ご自身のことを『シニア』だと思っているでしょうか?」
マーケティングは、結局「人間理解」
アライブのブログでは、これまでホームページ制作やSEO、AI検索(LLMO)など、Webの手法について多く書いてきました。
ただ、私たちが仕事の中で一番時間をかけているのは、手法ではありません。お客様のお客様が、いま何を考え、何に迷い、何を決め手に選んでいるのかを理解することです。どんなに美しいデザインも、どんなに精度の高い広告も、受け取る「人」の気持ちが動かなければ成果にはつながりません。
そこで今回から、シリーズ「Webマーケターが読む、いまの消費者」として、シニア、住宅購入層、EC購買層など、消費者の変化をデータと現場の両面から読み解いていきます。
第1回のテーマは、「シニア」です。
60代の多くは、自分を「シニア」だと思っていない
2026年10月、日経クロストレンドで「令和“ニュー”シニア消費の実態」という特集が始まりました。博報堂生活総合研究所が40年にわたって追ってきた生活者データから、企業が描く「シニア像」と本人の意識のズレを明らかにしています。
その中から、Webマーケティングに直結する数字を3つご紹介します。
- 60代が「老人」だと思う年齢は、平均75.4歳(1986年は71.3歳)
- 60代の9割が、気持ちの年齢を「実年齢より若い」と答え、その差は平均13.7歳
- 60代のスマホ経由のネット利用(平日)は91.8%(2016年は56.1%)
※博報堂生活総合研究所「シニア調査」(首都圏60代)。日経クロストレンド(2026年10月19日)掲載のデータより
いま60代を迎えているのは、バブル期に「新人類」と呼ばれた世代です。若いころから自分の目でブランドを選び、働き盛りにWindows 95やスマートフォンの登場を経験してきました。
同研究所は、60〜74歳くらいの方の自己認識を「ミドル以上、シニア未満」と表現しています。
つまり、「シニアの方へ」という呼びかけが、60代の方全員に自分向けの言葉として届くとは限りません。
「シニア向け」がうまくいかない、本当の理由
特集では、企業が陥りがちな「シニアへの5つの誤解」として、「やさしい商品を求めている」「デジタルが苦手」「地元の縁を大事にしたい」「仕事が生きがい」などが挙げられていました。
私たちは、この話を読んで、住宅業界で何度も見てきた光景を思い出しました。
「あなたらしい家づくり」「家族の笑顔を育む住まい」。
さまざまな会社で使われるため、独自の魅力が伝わりにくい言葉です。私たちはこうした言葉を「誰でも言える言葉」と呼び、使わないようにしています。
「シニア向け」も、実は同じ構造です。
年齢というラベルは、作り手が「お客様を深く考えること」を省略するための型になりやすいのです。
「60代だから、文字は大きく」「60代だから、安心感を」「60代だから、紙のチラシで」。一つひとつはもっともらしく見えます。でも、それは目の前のお客様を見て決めたことではなく、「60代」という箱を見て決めたことです。
特集のデータでは、60代を「趣味に生きる時」と答えた人は47.7%まで減り、「開放・解放の時」と答えた人が37.1%に増えています(1986年は26.2%)。「遊びが生きがい」と答えた人も、1986年の36.5%から60.5%に増えました。
同じ60代でも、仕事を続けている人、新しいことを始めたい人、親の介護をしている人、ひとりの時間を楽しみたい人がいます。年齢で括った瞬間に、この違いは見えなくなります。
型に当てはめるだけでは、違いが伝わりにくくなる。
これは、私たちがどの業界のお手伝いでもお伝えしていることですが、シニア層のマーケティングでもまったく同じです。
アライブが現場でやっていること
では、どうすればいいのか。私たちが実際の制作・支援で大切にしていることを3つご紹介します。
1. 年齢ではなく「状況」と「動機」でお客様を描く
私たちが支援したある企業(社名非公開)のパート採用では、求人を作る前に、働いているスタッフの方々に話を聞くところから始めました。
すると、同じ「パート」でも、20〜30代の子育て中の方は「子どもの都合を優先できるか」「急な休みに理解があるか」を重視し、40〜50代の子育てがひと段落した方は「次のやりがい」を求めていることがわかりました。
そこで、層ごとに伝える内容を分け、AIも活用して求人の画像や文章を作り分けた結果、採用数が大きく伸びました。
ここで分けたのは、年齢そのものではありません。その人がいま置かれている状況と、働く動機です。
シニア層も同じです。「60代」ではなく、「仕事を続けながら、新しい趣味を始めたい人」「子どもが独立して、夫婦二人の暮らしを考え始めた人」というように、状況と動機で描くと、伝えるべき言葉が具体的になります。
2. 「やさしさ」は、言わずに設計に溶かす
「シニア専用ページを作り、文字を大きくする」のではなく、サイト全体を誰にとっても読みやすくする。これが私たちの基本的な考え方です。
- 本文の文字サイズ・行間・コントラストを、全ページで十分に確保する
- ボタンやリンクを、押し間違えにくい大きさにする
- 電話番号はタップで発信でき、受付時間がすぐわかるようにする
- フォームの項目は、本当に必要なものだけにする
これは、移動中にスマホで見ている30代にも、老眼が始まった40代にも効きます。
「シニアのため」と書かなくても、結果としてシニアにも使いやすい。やさしさは、看板ではなく設計で伝わるものだと考えています。
特集では、星野リゾートの「温泉めぐり 界の定期券」も紹介されていました。以前、シニアの身体的な負担を減らす方向で打ち出したときは反応が薄かったものの、ライフスタイルに焦点を当てたこのサービスは、売り出すと即完売するほどになったそうです。対象は70歳以上ですが、表記は「70歳以上」だけで、「シニア向け」とはうたっていません。
3. 作る前に、お客様に会いに行く
愛知県刈谷市でサービス付き高齢者向け住宅「シャトーヨサミ ウェルネス」を運営する依佐美様のリニューアルでは、全国の高齢者住宅のサイトを比較し、施設の強みを棚卸しするところから始めました。「誰に、何を伝えるのか」を依佐美様とアライブのメンバー全員で共有し、現場のスタッフの方にもアイデア出しに参加していただいています。
公開後は、サイトで施設の考え方を理解したうえで見学に来られる方が増え、見学時の会話もスムーズになったそうです。
高齢の方に向けたサービスであっても、出発点は「高齢者向けのサイトはこういうもの」という型ではなく、その施設が大切にしていることと、それを必要としている人の気持ちです。
作る前に、考える。私たちが創業以来大切にしてきた進め方です。
住宅会社・工務店の場合
アライブは、20年以上にわたって住宅会社・工務店のWebマーケティングに関わってきました。その視点から、住宅業界向けにもう少し具体的にお伝えします。
特集のデータでは、「大家族で住みたい」と答えた60代は1996年の50.6%から2026年には32.7%に、「子とはいつまでも一緒に暮らしたい」は30年で3分の1程度にまで下がっています。
二世帯住宅や「家族に囲まれる老後」だけを前提にした提案は、合わなくなってきていると言えそうです。
一方で、50代・60代の方の住まいの相談がなくなるわけではありません。平屋への建て替え、減築、住み替え、リノベーション。選択肢はむしろ広がっています。
そのとき大切なのは、「老後の家」として打ち出すのではなく、「これからの暮らしの家」として、具体的な暮らしを見せることです。
- 施工事例に、家族構成・延床面積・間取り・暮らし方を添えて、自分ごととして見てもらう(「夫婦二人+趣味の部屋」「それぞれの時間と居場所がある平屋」など)
- 「バリアフリー」「老後も安心」は、性能や設計の説明として事実で伝え、メインのメッセージにはしない
- 平屋・建て替え・リノベーションなど、選択肢を比較できる情報を用意する
- 見学会の予約は、Webフォームと電話の両方をわかりやすく示す
住宅は、どの世代にとっても人生で一番大きな買い物です。年齢で区切るのではなく、「どんな暮らしをしたい人か」で事例と言葉を設計する。これは、私たちが住宅会社のお手伝いでいつもお伝えしていることと同じです。
採用・ECの場合
採用
60代の就業率は大きく上がり、60〜64歳では74.9%に達しています(総務省「労働力調査」)。ただ、働く理由は「組織での責任」から「自分の関心を満たすこと」へ移りつつある、と特集は分析しています。
「これまでの経験を活かして」という打ち出しだけでなく、「未経験から始められる」「週何日から、何時間から働ける」という入口も用意すること。そして、実際に働いている同世代スタッフの声を、写真と一緒に紹介すること。応募の決め手になるのは、こうした具体的な情報です。
EC・通販
- 「シニアに人気」「◯歳からの」といった年齢ラベルを、商品名やバナーで前面に出しすぎない
- 「高級」と言うより、素材・製法・作り手など、自分の目で選べる情報を充実させる
- 定期購入の解約方法、送料、問い合わせ先など、買う前の不安を解消する情報を見つけやすい場所に置く
- チラシ・カタログとECサイトで、価格や内容の表記をそろえる
AI検索時代、60代に向けた情報発信にも必要な視点
もう一つ考えたいのが、AI検索への対応です。60代のスマホ経由のネット利用が広がるなか、生成AIも情報収集の選択肢の一つになり得ます。ただし、スマホ利用率の高さだけで、生成AIの利用実態まで判断できるわけではありません。
例えば、ChatGPTにこう聞いてみてください。
「60代の夫婦で、愛知に平屋を建てたい。趣味の部屋がほしい。相談できる工務店は?」
AI検索でも「シニア向け」というラベルだけに頼らず、どんな暮らしを、どのような事例で実現してきたのかを具体的に伝えることが重要です。こうした一次情報は、ユーザーが比較検討する際にも役立ちます。
AIにどう紹介されているかを確かめる方法は、自社はAIにどう紹介されている?の記事でご紹介しています。
まとめ:顧客は永久に「人」である
今回のポイントをまとめます。
- 60代の多くは実年齢より気持ちが若く、「シニア向け」という表現が響かない場合もある
- 年齢というラベルは、お客様を深く考えることを省略する「型」になりやすい
- 年齢ではなく「状況」と「動機」でお客様を描く
- 「やさしさ」は看板ではなく、サイト全体の設計で伝える
- 作る前に、実際のお客様に話を聞く
最後に一つ、お伝えしておきたいことがあります。
今回ご紹介したデータは首都圏の60代を対象にした調査で、名古屋・東海の、しかも自社のお客様がまったく同じとは限りません。データは、自分たちの思い込みに気づくための材料です。それをそのまま当てはめれば、今度は「新しいシニア像」という別の型ができてしまいます。
データで思い込みを外し、自社のお客様の声で中身を埋める。
相手が20代でも60代でも、AIでも人でも、私たちが向き合っているのは最終的に「人」です。
よくある質問
Q. シニア層向けに、専用のページやサイトは作らないほうがいいですか?
一概に不要とは言えません。利用者の多くが高齢の方であるサービスでは、専用の情報設計が必要なこともあります。ただ、「60代以上の新規客を増やしたい」という目的であれば、まずはサイト全体の読みやすさを整え、「年齢」ではなく「どんな状況の人、何をしたい人のためのページか」という切り口でページを作ることをおすすめします。
Q. シニア層にはWeb広告よりチラシのほうが効果的ですか?
商圏や商材によって答えは変わります。ただ、60代のスマホ経由のネット利用は9割を超えており、チラシを見た方がその後スマホで会社名を検索することも珍しくありません。紙かWebかではなく、チラシからWeb、Webから電話や来店へと行き来しても、情報と体験がそろっていることが大切です。
Q. 自社のお客様の年齢層や動機がわかりません。何から始めればいいですか?
Googleアナリティクス(GA4)やMeta広告の管理画面では、おおまかな年齢層を確認できます(設定やデータ量によっては表示されない場合もあります)。ただ、動機までは数字ではわかりません。まずは最近ご契約いただいたお客様3人に、「なぜ選んでくれたのか」「何に迷ったのか」を聞いてみてください。それだけでも、打ち出すべき言葉が見えてきます。
アライブでは、ホームページ制作・Web広告・採用支援のどれにおいても、作る前に「誰に、何を伝えるか」を整理するところから一緒に考えています。
「60代以上のお客様を増やしたいが、どう打ち出せばいいかわからない」「シニア向けに作ったページの反応が良くない」という段階からでも構いません。まずは現状の課題整理からお手伝いします。お気軽にご相談ください。
※出典:日経クロストレンド「『定番シニア像』の常識崩壊 データで暴く令和ニューシニア5つの誤解」(2026年10月19日)。記事中のデータは、同記事に掲載された博報堂生活総合研究所「シニア調査」(首都圏60代)、総務省統計局「労働力調査」によります。
- AI (6)
- AIO (6)
- Google jobs (2)
- IT関連 (12)
- Pardot設定・アップデート (21)
- SalesCloud (1)
- SEO (29)
- SNSマーケティング (27)
- UXデザイン (22)
- Webサイト制作 (62)
- WEBマーケティング (162)
- Webメディア活用 (11)
- Zoom (4)
- クラウドフレア (2)
- コロナウイルス (12)
- コンテンツマーケティング (5)
- サーバ (2)
- サーバ保守運用 (1)
- セキュリティ (2)
- ブランディング (2)
- ベトナム (13)
- マーケティングオートメーション (26)
- マーケティング全般 (184)
- リモートワーク (9)
- 働き方 (6)
- 写真撮影 (7)
- 動画 (7)
- 採用マーケティング (18)
- 経営全般 (118)









