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最先端AI企業がいま「編集者」を高待遇募集。その理由と今後の価値とは?

2026/09/01 | AI | マーケティング全般

三輪 尚士

Writer三輪 尚士

CEO / Founder

編集者の時代

最先端のAI企業が編集者の採用を強化している

生成AIが広まってから、「ライターの仕事はなくなるのではないか」という話をよく聞くようになりました。

実際、ChatGPTやClaudeを使えば、ブログ記事も広告コピーもSNS投稿も数分で形になります。以前ならライターが半日かけて書いていた原稿が、数十秒で出てきます。そう考えれば、文章を書く仕事の価値は下がっていく、と予想するのは自然だと思います。

ところが、AI開発の最前線にいる企業を見ると、逆のことが起きています。

Claudeを開発するAnthropicは、「Standards Editor」という職種を募集しています。社内の文体基準を管理し、ニュースや発表、研究記事を編集する仕事です。求人票には、書き手の意図を損なわずに文体を揃えること、複雑な発表を明快な文章に凝縮すること、原稿を公開まで持っていくことが求められると書かれています。

そして提示されている年俸は265,000〜295,000ドル。日本円にすると、おおよそ4,100万円から4,500万円です。

さらに興味深いのは、歓迎条件のひとつに「Claudeのようなツールを使って編集業務を効率化した経験」が挙がっていることです。募集要項には、公開までの工程を速く一貫させるための、Claudeを組み込んだワークフロー作りも職務として並んでいます。

つまりAnthropicは、自社のAIを誰よりも自由に使える立場にありながら、そのAIを使いこなす人間の編集者を、年俸4,000万円台で採用しようとしているわけです。

世界最高峰の文章生成AIを持っている会社が、なぜここまでして人間の編集者を必要とするのか。

私はここに、これからのWeb制作とWebマーケティングがどう変わっていくのか、そのヒントがあると思っています。

 

「文章を作るコスト」は、限りなくゼロに近づき、ライターの価値はなくなってきていたはずだったが…

生成AIがもたらした最大の変化のひとつは、文章を作るコストです。

これまでの記事制作には、企画し、情報を集め、構成を考え、書き、推敲するという工程が必要でした。当然、それなりの時間と人件費がかかります。ところが今は、構成案を10個出すことも、5,000文字の原稿を書き上げることも、数分で済んでしまいます。

つまり「文章そのものを作る能力」は、急速にコモディティ化しているということです。

これはWeb業界にとって、かなり大きな意味を持つ変化です。例えば、SEO記事やWebコンテンツを大量に制作できること自体は、以前ほどの競争力にはならなくなってきているということです。これにより、ライターの仕事はなくなるとまで言われていました。

 

AIの原稿は、なんとなく違い、なぜか刺さらない

一方で、AIに記事を書かせてみると、もうひとつ気づくことがあります。

文章そのものは、かなり上手なのです。内容も間違っていないし、日本語としても自然です。それなのに、読んでみると「なんとなく違う」と感じることが頻繁に起こります。

「この会社が言うべきことではない」「ターゲットに刺さらない」「どこかで読んだような内容になっている」「情報は正しいけれど、面白くない」などなど…

この「なんとなく違う」を具体的にどう直すのか判断する、ここに必要なのが編集の力です。

 

編集とは、誤字を直す仕事ではない

編集を「文章の手直し」だと捉えている方は多いと思います。しかし本来の編集は、もっと本質的な「判断の仕事」です。

「誰に伝えるのか」「何を伝えるのか」「そして、何を伝えないのか」「どの情報を採用し、どれを捨てるのか」「どの順番で伝えるのか」「どこまで深掘りするのか」「この会社らしい表現になっているか」「最終的に、この内容を世に出していいのか」などなど…。

いずれも、文章力そのものとは別の能力です。

そして重要なのは、AIが文章を大量に作れるようになるほど、この判断の重要性がむしろ上がるということです。選択肢が10個しかなければ選ぶ苦労は小さい。100個あれば、選べる人がいなければ何も決まりません。

 

AI企業の求人票に書かれていた、「人による判断の価値」

面白いのは、AI企業の求人票を読むと、この判断こそが仕事だと明記されていることです。

OpenAIは「Safety Transparency Editor」という職種を募集しています。AIの安全性に関する技術的な取り組みを、外部にどう伝えるかを設計・実行する役割です。求人票に並んでいるのは、語るべき筋を見つけること、どの詳細が重要かを判断すること、どこに補足や根拠が必要かを見極めること、正確さを犠牲にせずに複雑さを翻訳すること、ここには「上手に書くこと」がひとつも出てきません。すべて何をどう伝えるかを決める仕事です。

しかもこの職種でも、AIを単なる下書きツールとしてではなく、仕事の進め方そのものを作り変える手段として深く使うことが期待されています。

音声AIのElevenLabsも「Writer and Editor」を募集しており、求める人物像は「ジャーナリストの勘を持つ書き手」です。要件のひとつに、他人の原稿をその意図を保ったまま組み立て直す編集力が挙げられています。

三社に共通しているのは、文章を作る能力そのものではなく、素材から何を取り出し、どう構成し、どこまで語るかを決める能力を求めている点です。

つまり彼ら自身が、「文章を生成できること」と「良いコンテンツを作れること」は別物だと考えているということです。自社の最先端AIを誰よりも自由に使える立場にありながら、なお人間の編集者を置いているという事実が、それを物語っています。

 

人の仕事は、ライターから「AIを使いこなす編集者」へ

これまでのコンテンツ制作は、人間が考え、人間が書き、人間が編集する、という流れでした。

これからは、人間が方向性を決め、AIが大量に生成し、人間が選び、編集し、完成させる、という流れが増えていくでしょう。

そうなると「ライター」という仕事の中身も変わります。求められるのは、AIに適切な材料を与えること、複数の案を出させること、その中から良いものを見抜くこと、事実関係を確認すること、ブランドに合わせて調整すること、必要なら追加取材をすること、そして最終的なアウトプットに責任を持つことです。

書く人から、決める人へ。「ライターから AI+編集者 への移行」です。

 

SEOやコンテンツマーケティングは、「記事本数」だけでなく品質重視に

この変化は、SEOやコンテンツマーケティングにも直接影響します。

これまでのSEOでは、「月10記事制作します」「年間120記事公開します」といった記事本数が、サービスの価値として扱われる場面がありました。しかしAIを使えば、極端な話、100記事でも1,000記事でも作れます。本数という数字そのものの価値は、下がっていかざるを得ません。

代わりに効いてくるのが、一般論ではなく、その会社でなければ発信できない情報を持っているかです。

例えば、実際の顧客から聞いた話、営業担当者が現場で蓄えた知識、社内の専門家しか知らないノウハウ、自社にしかないデータ、成功事例だけでなく失敗事例、そして経営者自身の考えなどです。

こうした一次情報を社内から引き出し、AIを使って整理し、検索ユーザーにとって価値のある形に編集する。これからのコンテンツ制作は、この方向に寄っていくと思います。

 

AI時代、Web制作会社の役割も変わる

同じことが、文章以外にも起きています。

AIは、画像も作れる、動画も作れる、コードも書ける、Webサイトの構成案も出せます。AIによって「作る」という工程は、あらゆる領域で高速化しています。

だからこそ、その前後にある判断が重くなります。何を作るのか、なぜ作るのか、誰に届けるのか、出てきた案のどれを採用するのか。

Web制作会社の価値も、「Webサイトを作れる会社」から「AIを使いながら、企業の情報を整理し、ユーザーに伝わる形へ編集できる会社」へ移っていくのではないでしょうか。

 

生成が無限に近づくほど、選択の価値が上がる

AI以前は、作れること自体に価値がありました。文章を書ける、デザインできる、プログラムを書ける、動画を編集できる、それだけで仕事になりました。

しかし、多くの人が一定水準のものを作れるようになると、次に希少になるのは「何が良いのかを判断できる能力」です。

AIが100本のコピーを出しても、一番良い1本を選べなければ意味がありません。10種類のデザイン案が出ても、どれがその企業に合うか判断できなければ前に進みません。AIが100本の記事を書いても、公開すべきものを見極められなければ、増えるのはノイズだけです。

私は、AIによって人間の仕事がなくなるとは思っていません。ただ、仕事の重心は確実に移動します。「自分で作ること」に使っていた時間が、「考えること」「選ぶこと」「編集すること」「確認すること」へ移っていくと思います。

これから必要になるのは、AIを使わずに頑張って制作する人ではありません。かといって、AIに全部任せる人でもありません。AIを使って大量の選択肢を作り、その中から最も良い答えを選び、さらに磨き上げられる人だと思います。

世界最先端のAI企業が人間の編集者を採用しているという事実は、その未来を少し先に見せてくれているのだと思っています。

「AIが進化するほど、人間に求められるのは作業ではなく判断になる」ーWeb制作もWebマーケティングも、この前提で組織と仕事のあり方を考え直し、価値を出していく必要があります。

 

この「編集」は、私たちがずっとやってきたこと

ここまで書いてきて改めて思うのは、この記事で言う「編集」は、アライブが以前から仕事の中心に置いてきたものだということです。

私たちは、ただWebサイトを作る、ただ記事を書くという進め方をしてきませんでした。その会社の強みはどこにあるのか、誰に届けたいのか、どの情報を出し、何を出さないのか、経営者や現場の方に話を聞き、社内に埋もれている一次情報を掘り起こし、伝わる形に組み立て直す、制作に入る前のこの工程にこそ、いちばん時間をかけてきました。

だから生成AIについても、私たちの仕事を置き換えるものではなく、加速させるものだと捉えています。選択肢を大量に作れるようになった分、選び、磨き上げる力がそのまま成果の差になる。これまで積み上げてきたものが、これからより効いてくる局面だと思っています。

このAI時代でもブランディング・マーケティングで成果を上げていきたい企業様は、お気軽にアライブにご相談ください。

 

参考(本記事で参照した求人情報)

Anthropic「Standards Editor」 https://job-boards.greenhouse.io/anthropic/jobs/5317734008
OpenAI「Safety Transparency Editor, Safety Systems」 https://openai.com/careers/safety-transparency-editor-safety-systems-san-francisco/
ElevenLabs「Writer and Editor」 https://elevenlabs.io/careers/ea45b306-c62d-4aba-98ba-ee2e62adf91a/writer-and-editor

※年俸の円換算は1ドル155円で計算しています。求人内容および募集状況は執筆時点のものです。

三輪 尚士

Writer三輪 尚士

CEO / Founder ブログ プロフィール

アライブ創業者。名古屋を拠点に、20年以上にわたり全国の数百社以上の企業のWeb制作・ブランディング、Webマーケティングを支援。住宅、インテリア、製造、物流、医療、介護、観光、小売、飲食、EC、公共団体など幅広い領域で、“課題解決型のWeb制作、Webマーケティング”を強みに、コーポレートサイトからプロダクトサイト、EC、採用サイト、LPまで幅広いプロジェクトをプロデュース、ディレクション。ベトナムでもWeb制作、Webマーケティングを支援している。

アライブ創業者。名古屋を拠点に、20年以上にわたり全国の数百社以上の企業のWeb制作・ブランディング、Webマーケティングを支援。住宅、インテリア、製造、物流、医療、介護、観光、小売、飲食、EC、公共団体など幅広い領域で、“課題解決型のWeb制作、Webマーケティング”を強みに、コーポレートサイトからプロダクトサイト、EC、採用サイト、LPまで幅広いプロジェクトをプロデュース、ディレクション。ベトナムでもWeb制作、Webマーケティングを支援している。

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