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住宅業界のマーケティングに20年以上関わっているアライブ社長が考える、今の時代で「工務店・住宅会社」が勝ち残っていく方法
Writer三輪 尚士
CEO / Founder

はじめに
こんにちは。アライブの三輪です。
私は、家業が工務店の家に生まれました。自宅兼事務所には常に丸太や板、釘などが近くにありましたし、父が二級建築士、兄が一級建築士でした。そのように家づくりが自然に生活に溶け込んでいたせいか、アライブのクライアントも工務店、住宅会社が創業当初から多くいらっしゃいました。
そういった流れの中で、20年以上、住宅・建設業界のWebマーケティングに向き合ってきましたが、近年の住宅業界のマーケティングは、昔より圧倒的に難しくなったと思います。簡単には成果が出なくなりました。
ただ、難しくなったからこそ、勝ち残るための考え方はむしろはっきりしてきた、というのが今の私の実感です。
そこで、この記事では、きれいごと抜きに、今の住宅・工務店が置かれている状況と、その中でどう戦うべきかについて、私の考えを率直に書いてみます。
なぜ今、住宅・工務店のマーケティングは難しくなったのか
住宅業界のマーケティングの難しさの正体を、私は大きく3つに分けて捉えています。
市場が横並びになったこと、打ち手で差がつかなくなったこと、そして需要そのものが縮み・均質化していることです。
市場が「横並び」になった
まず前提として、「誰がやっても伸びる」時代は終わりました。住宅は今でも大きな市場ですが、以前のように伸ばしやすい市場ではなくなっています。
そして、とにかく全員が同じことを言っています。これは私たちWeb制作の業界とまったく同じ構図です。制作会社はどこも「デザインができます」「SEOができます」「結果を出します」と口を揃えて言います。
住宅会社側も同じで、「性能がいいです」「デザインがいいです」「丁寧にヒアリングして、あなたの理想の家を作ります」と、判で押したように同じ訴求をしている状態です。
どのサイトを見ても、キャッチコピーが少し違うだけで、中身は同じに見えてしまうのです。
私はこの状態は、化粧品業界に近いと感じています。化粧品も、成分も訴求も似たようなことを言ってる中で、ほんのわずかな差で選ばれていく。住宅も、まさにそこに近づいてきました。
また、厄介なのは、「住宅業界はこう言えばいい」「このレイアウトが正解だ」という“型”が、業界に共有され尽くしていることです。昔はそれに合わせれば売れました。
しかし今は、その型に当てはめて作ると、必ず埋もれます。むしろ落ちます。みんながその型を知っていて、みんなが同じように使っているからです。
消費者が「賢くなった」
もう一つ大きいのが、家を建てる側、つまり消費者が格段に賢くなったことです。
今のお客様は、スマホで何社ものサイトを見比べ、インスタで施工例を眺め、AIからもたくさん情報を得て、価格の相場も性能の知識も、かなりのレベルまで自分で調べてから問い合わせてきます。以前とは、持っている情報量がまるで違います。
そうなると、聞こえのいいうたい文句や、どこかで見たようなキャッチコピーは、すぐに見抜かれます。
「どの会社も同じことを言っているな、浅い内容しかないな」と、お客様の側が先に気づいてしまうのです。
情報が乏しかった時代なら通用した“それっぽい”見せ方が、賢くなった消費者の前ではほとんど効かなくなりました。
打ち手で差がつかなくなった
昔のマーケティングは、正直もっと単純でした。
競合がSEOをやっていない、リスティング広告を出していない、インスタをやっていない、施工写真のクオリティが低い——そういう「相手がまだやっていないこと」を先にやるだけで、勝ててしまったのです。
実際、私たちも他社がきちんとやれていなかった時代は、当たり前のことを丁寧にやるだけで、それなりの結果を出せました。
でも今は、みんながやっています。SNS広告もリスティング広告も、正しく運用すること自体がもはや当たり前で、そこで大きな差はつきません。
写真も象徴的です。かつては写真さえ良ければコンバージョンが取れる、という感覚がありましたが、今はどの会社も写真のレベルが上がってきています。
私自身、今まさに住宅のプロジェクトに入っていてたくさんの競合の広告がたくさん見ていますが、みんな本当に写真がうまいです。
だからこそ、「相手がやっていないことをやる」という勝ち方そのものが、もう通用しなくなっているのです。
需要そのものが縮み、均質化している
さらに、需要の側も厳しくなっています。ウッドショックやナフサショックなどで原材料が高騰し、住宅価格は上がり続けました。
その結果、かつて家を買えていた層が買いにくくなり、需要が大きく減っています。また、各社が狙える顧客層は細く狭くなっています。みんな同じ層を狙っているのです。
パイが小さくなったところに、たくさんの住宅会社が群がって奪い合っている、今はそういう状況です。
そのうえ、顧客の「好み」まで均質化してきました。インスタの影響もあってか、ホテルライクな家、平屋というように、みんなの好きなものが似通ってきています。
昔のように、細かくペルソナを描き分けても、そこで差がつきにくくなっているのです。
では、今の時代にどう戦うか ― 私の考え方
ここからが本題です。この横並びの市場で、工務店・住宅会社が勝ち残っていくために、私が大事だと考えていることを書きます。
まず、マーケット・競合・ターゲットを徹底的に、客観的に理解する
すべての出発点は、マーケット・競合・ターゲットを徹底的に分析し、理解することです。
市場が今どう動いているのか、競合が何を・どう打ち出しているのか、狙うべきお客様は本当は何を求めているのか、ここを思い込みのまま飛ばして施策に走っても、結局は横並びの中に埋もれます。
そして特に大事なのが、「今まで自分たちがなぜ選ばれてきたのか」を、自社のフィルターを通さずに客観的に見つめ直すことです。多くの会社は、自分たちの強みを「たぶんこれだろう」と思い込んでいます。
ですが、実際にお客様が選んだ理由は、社内の思い込みとずれていることが少なくありません。
お客様一人ひとりを深く掘るN1分析、お客様の声の分析、競合が何をどう語っているかの分析、こうした地味な作業を通して、自分たちの本当の価値を、自分たちの都合を挟まずに直視する。ここからすべてが始まります。
型を捨て、「針の穴に糸を通す」ように1つずつ作り込む
結論から言えば、型・テンプレートに当てはめるのをやめることです。そして、針の穴に糸を通すようなイメージで、1つずつ丁寧に作り込む、これに尽きます。
トップページさえ良ければいい、という話ではありません。回遊した先のコンテンツ1つひとつ、置かれているキャッチコピー1行ずつに、考え抜きと粘りを持たせる。
見た目は他社と同じように見えても、中身の言葉がまるで違う、その状態を作れるかどうかで、結果が変わってきます。
その理解を、その会社にしか言えない言葉に翻訳する
客観的に自分たちの本当の価値をつかめたら、次はそれを言葉にしていきます。
ここで大事なのは、つかんだ理解を、その会社にしか言えない言葉へと翻訳することです。分析して終わりではなく、そこで見えた強みを、お客様に伝わる独自の表現にまで落とし込んで初めて意味があります。
「あなたらしい家づくり」「お客様の理想を形にした素晴らしい施工実績です」——こうした言葉は、誰でも言えてしまうがゆえに、みんな同じになります。
避けるべきはまさにここです。その会社が本当に持っているものから出発して、独自の言葉を創り出していく、この一手間こそが、横並びから抜け出す唯一の道だと考えています。
集客は「複合的」に見る ― 原因は広告だけにあるとは限らない
集客について言えば、SNS広告やリスティング広告を正しく運用するのは大前提です。
適当なターゲットや適当なクリエイティブで出していいわけがありません。ただ、それをやり切ったうえでコンバージョンが伸びないとき、原因は広告そのものよりも、着地するランディングページやコンテンツの側にあることが少なくない、というのが私の見立てです。
だから、「広告が悪い」「サイトが悪い」と単独で決めつけず、広告・LP・コンテンツを一体で、複合的に分析する必要があります。
SNSを前提に設計する。ただし万能ではない
今の注文住宅は、最初の興味の入り口がほぼインスタやYoutubeなどのSNSになっています。ここは前提として設計すべきです。写真映えやルームツアーで見つけてもらい、そこで最初の接点が生まれる。
ただし、インスタは万能ではありません。検討が進むほど、インスタの力は弱まっていきます。家はデザインの印象だけで買うものではないからです。
最後に購入を決断する場面では、Webサイトの中身、営業、スペック、価格といった別の要因が効いてきます。インスタで惹きつけ、その先はサイトや営業で確かめてもらう、この役割分担を取り違えると、フォロワーは増えても契約につながらない、という状態に陥ります。
SNS・広告・サイトの「体験」を揃える
そして、SNS・広告・ホームページを通して、同じ体験を一貫して届けることが重要です。
SNSで作った期待と、サイトで受け取る体験がずれていると、見込み客の中で違和感になり、どんなに個々の出来が良くても刺さりません。媒体をまたいでも体験がぶれないように揃える、ここは意外と見落とされがちですが、決定的なポイントです。
年収帯への訴求と、競合との差分を「同時に」設計する
最後に、狙いの定め方です。顧客が「この家いいな」と思っても、最終的には自分の年収との折り合いになります。狙える層が細くなっている今だからこそ、「どの年収帯に刺さるか」を明確にすることが欠かせません。
そのうえで、その年収帯で強い競合と、自社の何が違うのかという差分を、同時に設計する必要があります。自社・競合・顧客の三方向を見ながら、その会社ならではの立ち位置を彫り出していく、この作業をやり切った会社だけが、横並びの中で選ばれていくのだと思います。
おわりに ― 「真似」で伸びた時代は終わった
かつての住宅業界は、うまくいっている会社の何かを真似すれば、それなりに成長できました。
売れているサイトのレイアウトを真似る、流行りのキャッチコピーを真似る、他社のインスタの見せ方を真似る、それで一定の結果が出た時代が、確かにありました。
しかし、今は違います。全員が同じ型を知り、同じ打ち手を使い、同じような写真を撮れるようになった今、真似は「横並びの一員になる」ことでしかありません。真似で抜け出せる時代は、もう終わったのです。
今こそ必要なのは、マーケット・ターゲット・自社の3つを、きちんと整理し、深く理解することです。市場がどう変わっているのかを見極め、誰に届けるのかを定め、自社が本当に持っているものは何かを掘り下げる。
そのうえで、その会社にしか言えない言葉を、1つずつ丁寧に磨いていく、派手さはありませんが、これこそが本当のマーケティングだと私は思います。
言い換えれば、これからは「本当のマーケティングをやる工務店・住宅会社」だけが生き残っていく時代です。
真似の延長で走り続けるのか、それとも自社を見つめ直して丁寧に積み上げるのか、その選択が、これからの数年で大きな差になって表れると私は確信しています。
アライブ創業者。名古屋を拠点に、20年以上にわたり全国の数百社以上の企業のWeb制作・ブランディング、Webマーケティングを支援。住宅、インテリア、製造、物流、医療、介護、観光、小売、飲食、EC、公共団体など幅広い領域で、“課題解決型のWeb制作、Webマーケティング”を強みに、コーポレートサイトからプロダクトサイト、EC、採用サイト、LPまで幅広いプロジェクトをプロデュース、ディレクション。ベトナムでもWeb制作、Webマーケティングを支援している。











